第2章 確率分布と母関数の練習問題(統計検定準1級)

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統計検定準1級の第2章「確率分布と母関数」の練習問題 10 問です。解答と解説は各問の下を開くと読めます。本文は第2章の参考書にあります。

問2.1 累積分布関数の性質

次の関数 $F(x)$ のうち,ある確率変数の累積分布関数(分布関数)になっているものを一つ選べ.ただし,指定のない範囲では $F(x)=0$ とする.

  1. ①

    $F(x)=\dfrac12+\dfrac1\pi\arctan x\quad(-\infty<x<\infty)$

  2. ②

    $F(x)=0.8\,(1-e^{-x})\quad(x\ge0)$

  3. ③

    $F(x)=1-(1-x)e^{-x}\quad(x\ge0)$

  4. ④

    $F(x)=\dfrac{x^2}{1+x^2}\quad(-\infty<x<\infty)$

  5. ⑤

    $F(x)=0\ (x\le0)$,$F(x)=0.5\ (0<x\le1)$,$F(x)=1\ (x>1)$

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正解:①

「分布関数になり得るか」の判定 $\to$ 次の3条件を1つずつ機械的にチェックします.

  • 単調非減少:$x<y$ なら $F(x)\le F(y)$.

  • 右連続:$\lim_{h\downarrow0}F(x+h)=F(x)$.

  • 両端の極限:$F(-\infty)=0$,$F(\infty)=1$.

  • 正しい.$\arctan x$ は増加関数で連続,$x\to-\infty$ で $-\pi/2$,$x\to\infty$ で $\pi/2$ なので,$F(-\infty)=\frac12-\frac12=0$,$F(\infty)=\frac12+\frac12=1$.3条件をすべて満たします.これはコーシー分布の分布関数です(密度 $F'(x)=\frac{1}{\pi(1+x^2)}$).

  • 誤り.$x\to\infty$ で $F(x)\to0.8\ne1$.(c) に反します.残りの確率 $0.2$ がどこにもない状態です.

  • 誤り.$F(0)=0$,$F(\infty)=1$ で連続ですが,微分すると$$F'(x)=-\bigl\{-e^{-x}-(1-x)e^{-x}\bigr\}=(2-x)e^{-x}$$ となり,$x>2$ で負になります.減少する区間があるので (a) に反します(「密度」が負になってしまう).

  • 誤り.$x\to-\infty$ で $F(x)\to1$ となり (c) に反します.また $x<0$ で減少しているので (a) にも反します.

  • 誤り.$x=0$ で $F(0)=0$ ですが,右から近づくと $0.5$ です.$\lim_{h\downarrow0}F(h)=0.5\ne F(0)$ なので (b) の右連続性に反します.$x=1$ でも同様です.跳びのある点では「跳んだ後の値」をとるのが分布関数です($F(0)=0.5$,$F(1)=1$ と定義すれば正しい分布関数になる).

よくある誤り

「連続で $0$ から $1$ まで上がる」だけで ③ を選ぶ誤り.途中で下がる関数を見落としやすいので,微分して符号を見ます.逆に,跳びがあっても右連続なら分布関数として問題ありません.

検算・時短

連続な候補は $F'(x)$ を計算し,それが非負で全積分1の「密度」になっているかを見れば (a)(c) を同時に確認できます.

参照参考書 2.1.2項(累積分布関数の3つの性質)/WB p.7

問2.2 離散と連続が混ざった分布

確率変数 $X$ の分布関数が次で与えられている.$$F(x)=\begin{cases}0 & (x<0)\\ x/4 & (0\le x<1)\\ 1/2 & (1\le x<2)\\ 1 & (x\ge2)\end{cases}$$

〔1〕 $P(1\le X\le2)$ を求めよ.(小数第3位を四捨五入し,小数第2位まで答えよ)

解答欄ア.イウ

〔2〕 $X$ の期待値 ${\operatorname{E}}[X]$ を求めよ.(小数第4位を四捨五入し,小数第3位まで答えよ)

解答欄エ.オカキ

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正解:〔1〕0.75 〔2〕1.375

分布関数に跳びと傾きの部分がある(混在型)+$\le$ と $<$ が混ざった確率 $\to$ 跳びの高さ $F(a)-F(a-)=P(X=a)$ を拾い,連続部分と離散部分に分けて扱います.

各点での跳びは$$P(X=1)=F(1)-F(1-)=\frac12-\frac14=\frac14,\qquad P(X=2)=F(2)-F(2-)=1-\frac12=\frac12 .$$ 連続部分は $0\le x<1$ で密度 $F'(x)=1/4$(合計確率 $1/4$).

〔1〕$x=1$ の跳びも含めるので$$P(1\le X\le2)=F(2)-F(1-)=1-\frac14=0.75 .$$

〔2〕連続部分と離散部分に分けて足します.$${\operatorname{E}}[X]=\int_0^1 x\cdot\frac14\,\mathrm{d}x+1\times\frac14+2\times\frac12=\frac18+\frac14+1=1.375 .$$

よくある誤り

$F(2)-F(1)=1-\frac12=0.5$ としてしまうと $P(1<X\le2)$ を求めたことになり,$x=1$ の跳び $1/4$ が抜けます.

検算・時短

確率の合計 $\frac14+\frac14+\frac12=1$ を確認.期待値は,$X\ge0$ なので生存関数の積分でも求められます.$$\int_0^1\Bigl(1-\frac x4\Bigr)\,\mathrm{d}x+\int_1^2\Bigl(1-\frac12\Bigr)\,\mathrm{d}x=\frac78+\frac12=1.375 .$$ 跳びを気にせず「グラフの上側の面積」を測るだけなので,混在型ではこちらのほうが楽なことが多いです.

参照参考書 2.1.4項(離散と連続が混ざった分布),2.1.6項(生存関数で期待値を求める)/WB p.7

問2.3 生存関数と打ち切りのある量

ある機器の寿命 $T$(年)は平均3年の指数分布に従う.この機器は,故障しなくても使用開始から2年たつと交換する.実際の使用期間を $X=\min(T,2)$ とする.必要ならば $e^{-1/3}=0.7165$ を用いてよい.

〔1〕 $X$ の期待値 ${\operatorname{E}}[X]$ を求めよ.(小数第3位を四捨五入し,小数第2位まで答えよ)

解答欄ア.イウ

〔2〕 故障せずに2年で交換される確率 $P(X=2)$ を求めよ.(小数第3位を四捨五入し,小数第2位まで答えよ)

解答欄エ.オカ

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正解:〔1〕1.46 〔2〕0.51

上限2で打ち切った非負の量 $X=\min(T,2)$($X=2$ に確率の塊をもつ混在型)$\to$ $X\ge0$ なので生存関数による期待値の公式 ${\operatorname{E}}[X]=\int_0^\infty P(X>x)\,\mathrm{d}x$ を使うと場合分けが不要です.

$T$ は平均3の指数分布なので $P(T>x)=e^{-x/3}$.$X=\min(T,2)$ について$$P(X>x)=\begin{cases}P(T>x)=e^{-x/3} & (0\le x<2)\\ 0 & (x\ge2)\end{cases}$$ ($X$ は2を超えないので,$x\ge2$ では $P(X>x)=0$.)与えられた値から $e^{-2/3}=(e^{-1/3})^2=0.7165^2=0.51337$ です.

〔1〕$${\operatorname{E}}[X]=\int_0^2 e^{-x/3}\,\mathrm{d}x=\Bigl[-3e^{-x/3}\Bigr]_0^2=3\bigl(1-e^{-2/3}\bigr)=3(1-0.51337)=1.4599 .$$ よって 1.46.

〔2〕$P(X=2)=P(T\ge2)=e^{-2/3}=0.5134\ \to$ 0.51.

よくある誤り
  • ${\operatorname{E}}[\min(T,2)]=\min({\operatorname{E}}[T],2)=2$ とする誤り.$\min$ は線形でないので期待値の中から出せません.

  • 平均3を率と取り違えて $P(T>x)=e^{-3x}$ とする(平均 $\theta$ の指数分布の生存関数は $e^{-x/\theta}$).

検算・時短

場合分けで確かめると,${\operatorname{E}}[X]=\int_0^2 t\cdot\frac13e^{-t/3}\,\mathrm{d}t+2\,P(T>2)$.部分積分で第1項は $-2e^{-2/3}+3(1-e^{-2/3})$,第2項 $2e^{-2/3}$ と足すと $3(1-e^{-2/3})$ で一致します.また $0<{\operatorname{E}}[X]<\min({\operatorname{E}}[T],2)=2$ の範囲に入っています.

参照参考書 2.1.6項(生存関数で期待値を求める,例「打ち切りのある量の期待値」)/WB p.7

問2.4 生存関数で期待値を求める(離散型)

公正なサイコロを3回投げ,出た目の最大値を $M$ とする.$M$ の期待値を求めよ.(小数第3位を四捨五入し,小数第2位まで答えよ)

解答欄ア.イウ

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正解:4.96

独立な試行の最大値+非負整数値 $\to$ 「最大値が $k$ 以下」=「全部が $k$ 以下」で独立性が使えます:$P(M\le k)=(k/6)^3$.そのうえで離散型の公式 ${\operatorname{E}}[M]=\sum_{k\ge1}P(M\ge k)$ を使います.

$P(M\ge k)=1-P(M\le k-1)=1-\bigl(\frac{k-1}{6}\bigr)^3$($k=1,\dots,6$).$$\begin{aligned} {\operatorname{E}}[M]&=\sum_{k=1}^{6}\Bigl\{1-\Bigl(\frac{k-1}{6}\Bigr)^3\Bigr\}=6-\frac{0^3+1^3+2^3+3^3+4^3+5^3}{216}\\ &=6-\frac{225}{216}=4.9583\cdots . \end{aligned}$$ よって 4.96.

よくある誤り

$P(M\ge k)$ を $1-(k/6)^3$ とする($M\le k$ と $M\le k-1$ の取り違え).この場合 $6-441/216=3.96$ になります.

検算・時短

確率関数 $P(M=k)=\bigl(\frac k6\bigr)^3-\bigl(\frac{k-1}6\bigr)^3$ から$${\operatorname{E}}[M]=\frac{1\cdot1+2\cdot7+3\cdot19+4\cdot37+5\cdot61+6\cdot91}{216}=\frac{1071}{216}=4.958$$ で一致します.1回の平均3.5より大きく6より小さいことも確認できます.

参照参考書 2.1.6項(生存関数で期待値を求める,離散型の公式)/WB p.7

問2.5 同時確率の表・周辺分布・条件付き分布

確率変数 $X,Y$ はそれぞれ $0,1,2$ の値をとり,同時確率 $P(X=x,Y=y)$ は次の表のとおりである.

$Y=0$ $Y=1$ $Y=2$
$X=0$ 0.10 0.05 0.05
$X=1$ 0.15 0.20 0.15
$X=2$ 0.05 0.15 0.10

〔1〕 条件付き確率 $P(X=2\mid Y\ge1)$ を求めよ.(小数第3位を四捨五入し,小数第2位まで答えよ)

解答欄ア.イウ

〔2〕 条件付き期待値 ${\operatorname{E}}[Y\mid X=2]$ を求めよ.(小数第3位を四捨五入し,小数第2位まで答えよ)

解答欄エ.オカ

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正解:〔1〕0.36 〔2〕1.17

同時確率の表 $\to$ 周辺確率は行和・列和,条件付き確率は「条件の行(列)だけを取り出して,その合計で割る」.

まず行和と列和を書き込みます.

$Y=0$ $Y=1$ $Y=2$ 行和
$X=0$ 0.10 0.05 0.05 0.20
$X=1$ 0.15 0.20 0.15 0.50
$X=2$ 0.05 0.15 0.10 0.30
列和 0.30 0.40 0.30 1.00

〔1〕$P(Y\ge1)=0.40+0.30=0.70$,$P(X=2,\,Y\ge1)=0.15+0.10=0.25$.$$P(X=2\mid Y\ge1)=\frac{0.25}{0.70}=0.3571\cdots\ \to\ \textbf{0.36}.$$ 〔2〕$X=2$ の行を取り出し,行和 $0.30$ で割ると条件付き分布は$$P(Y=0\mid X=2)=\frac{0.05}{0.30}=\frac16,\quad P(Y=1\mid X=2)=\frac{0.15}{0.30}=\frac12,$$$$P(Y=2\mid X=2)=\frac{0.10}{0.30}=\frac13 .$$ $${\operatorname{E}}[Y\mid X=2]=0\cdot\frac16+1\cdot\frac12+2\cdot\frac13=\frac76=1.1666\cdots\ \to\ \textbf{1.17}.$$

よくある誤り

〔1〕で分母を $P(X=2)=0.30$ にすると $0.25/0.30=0.83$ となり,$P(Y\ge1\mid X=2)$ という逆向きの条件付き確率を求めたことになります.「$\mid$ の右側が分母」です.

検算・時短

表の合計が1,条件付き分布の合計 $\frac16+\frac12+\frac13=1$ を確認.条件付き期待値は $Y$ のとりうる範囲 $[0,2]$ に入ります.

参照参考書 2.2.2項(周辺分布),2.2.3項(条件付き分布,例「同時確率の表と周辺分布」)/WB p.7〜8

問2.6 同時密度関数・周辺密度・条件付き期待値

確率変数 $(X,Y)$ の同時確率密度関数が,定数 $c$ を用いて$$f(x,y)=\begin{cases}c\,x & (0<y<x<1)\\ 0 & (\text{それ以外})\end{cases}$$ で与えられている.

〔1〕 定数 $c$ の値を求めよ.

解答欄ア

〔2〕 $P(X+Y<1)$ を求めよ.(小数第4位を四捨五入し,小数第3位まで答えよ)

解答欄イ.ウエオ

〔3〕 条件付き期待値 ${\operatorname{E}}[X\mid Y=1/2]$ を求めよ.(小数第3位を四捨五入し,小数第2位まで答えよ)

解答欄カ.キク

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正解:〔1〕3 〔2〕0.375 〔3〕0.78

三角形上の同時密度 $\to$ まず定義域の図を描き,積分範囲をすべて図から読み取ります.条件付き期待値は「切り口を取り出して正規化」した条件付き密度で計算します.

〔1〕$x$ を固定すると $y$ は $0$ から $x$ まで動くので$$\int_0^1\!\!\int_0^x c\,x\,\mathrm{d}y\,\mathrm{d}x=c\int_0^1x^2\,\mathrm{d}x=\frac c3=1\quad\Longrightarrow\quad c=\textbf{3}.$$ 〔2〕三角形のうち $x+y<1$ の部分は,$0<y<\min(x,1-x)$ です.$x=1/2$ で場合分けします.$$\begin{aligned} P(X+Y<1)&=\int_0^{1/2}\!\!\int_0^{x}3x\,\mathrm{d}y\,\mathrm{d}x+\int_{1/2}^{1}\!\!\int_0^{1-x}3x\,\mathrm{d}y\,\mathrm{d}x\\ &=\int_0^{1/2}3x^2\,\mathrm{d}x+\int_{1/2}^{1}3x(1-x)\,\mathrm{d}x\\ &=\Bigl[x^3\Bigr]_0^{1/2}+\Bigl[\tfrac32x^2-x^3\Bigr]_{1/2}^{1}=\frac18+\Bigl(\frac12-\frac14\Bigr)=\frac18+\frac14=0.375 . \end{aligned}$$ よって 0.375.

〔3〕$Y=y$ を固定すると $x$ は $y<x<1$ を動きます.$Y$ の周辺密度は$$f_Y(y)=\int_y^1 3x\,\mathrm{d}x=\frac32(1-y^2)\qquad(0<y<1).$$ 条件付き密度は $f(x\mid y)=\dfrac{3x}{\frac32(1-y^2)}=\dfrac{2x}{1-y^2}\ (y<x<1)$.$y=1/2$ のとき $f(x\mid\tfrac12)=\dfrac{8x}{3}\ (1/2<x<1)$.$${\operatorname{E}}\Bigl[X\Bigm| Y=\tfrac12\Bigr]=\int_{1/2}^1x\cdot\frac{8x}{3}\,\mathrm{d}x=\frac83\cdot\frac{1-1/8}{3}=\frac79=0.777\cdots .$$ よって 0.78.

よくある誤り

〔3〕で積分範囲を $0<x<1$ にしてしまう誤り.$Y=1/2$ のとき,定義域の条件 $y<x$ から $x>1/2$ しかとれません.

検算・時短

$\int_{1/2}^1\frac{8x}{3}\,\mathrm{d}x=1$ を確認.切り口 $3x$ は右上がりなので,条件付き平均は区間 $(1/2,1)$ の中点 $0.75$ より少し右になるはずで,$0.78$ は整合的です.答えが区間 $(1/2,1)$ の外に出たら計算ミスです.

参照参考書 2.2.2項(周辺分布),2.2.3項(条件付き分布)/WB p.7〜8

問2.7 独立性の判定

次の同時確率密度関数 $f(x,y)$(指定した範囲の外では $0$)のうち,$X$ と $Y$ が独立になるものを一つ選べ.

  1. ①

    $f(x,y)=4xy\quad(0<x<1,\ 0<y<1)$

  2. ②

    $f(x,y)=8xy\quad(0<y<x<1)$

  3. ③

    $f(x,y)=x+y\quad(0<x<1,\ 0<y<1)$

  4. ④

    $f(x,y)=2e^{-x-y}\quad(0<y<x)$

  5. ⑤

    $f(x,y)=1/\pi\quad(x^2+y^2<1)$

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正解:①

連続型で $X,Y$ が独立 $\iff$ 同時密度が $g(x)h(y)$ と因数分解でき,しかも定義域が直積(長方形).式の形と定義域の2段階でチェックします.

  • 正しい.$4xy=(2x)(2y)$ で,定義域 $(0,1)\times(0,1)$ は長方形.周辺密度はそれぞれ $2x$,$2y$ で,積が同時密度に一致します.

  • 誤り.式は $8xy$ と因数分解できますが,定義域 $0<y<x<1$ は三角形です.実際 $f_X(x)=4x^3$,$f_Y(y)=4y(1-y^2)$ で,積は $8xy$ になりません.

  • 誤り.$x+y$ は $g(x)h(y)$ の形に分解できません.$f_X(x)=x+\frac12$,$f_Y(y)=y+\frac12$ の積は $x+y$ と異なります.

  • 誤り.$2e^{-x}e^{-y}$ と積の形ですが,定義域 $0<y<x$ が直積でないので独立ではありません(② と同じ落とし穴).

  • 誤り.単位円板上の一様分布です.$X$ が $1$ に近いと $Y$ は $0$ の近くしかとれず,独立ではありません(ただし相関係数は $0$).

よくある誤り

②④ のように式だけ見て「積の形だから独立」と判定する誤り.定義域の条件を指示関数 $\mathbb{1}(0<y<x)$ で書くと,積に分かれないことが分かります.

検算・時短

独立でないことを示すには,$f(x,y)=0$ なのに $f_X(x)f_Y(y)>0$ となる点(例:② で $(x,y)=(0.2,0.5)$)を1つ挙げれば十分です.

参照参考書 2.2.4項(独立性とその判定,例「独立性の判定」)/WB p.8

問2.8 確率母関数

非負整数値をとる確率変数 $X$ の確率母関数が$$G(s)={\operatorname{E}}\bigl[s^X\bigr]=e^{2(s-1)}\Bigl(\frac{1+s}{2}\Bigr)^2$$ で与えられている.必要ならば $e^{-1}=0.3679$ を用いてよい.

〔1〕 $P(X=1)$ を求めよ.(小数第4位を四捨五入し,小数第3位まで答えよ)

解答欄ア.イウエ

〔2〕 $X$ の分散 ${\operatorname{V}}[X]$ を求めよ.(小数第3位を四捨五入し,小数第2位まで答えよ)

解答欄オ.カキ

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正解:〔1〕0.135 〔2〕2.50

確率母関数が積の形 $\to$ 独立な和に分解できます.$e^{2(s-1)}$ は $\mathrm{Po}(2)$,$\bigl(\frac{1+s}{2}\bigr)^2=(\frac12+\frac12s)^2$ は $\mathrm{Bin}(2,\frac12)$ の確率母関数なので,$X=U+V$($U\sim\mathrm{Po}(2)$,$V\sim\mathrm{Bin}(2,\frac12)$,独立)と見なせます.

〔1〕$X=1$ となるのは $(U,V)=(1,0)$ または $(0,1)$ のとき.$$\begin{aligned} P(X=1)&=P(U=1)P(V=0)+P(U=0)P(V=1)\\ &=2e^{-2}\times\frac14+e^{-2}\times\frac12=e^{-2}\Bigl(\frac12+\frac12\Bigr)=e^{-2}. \end{aligned}$$ 与えられた値から $e^{-2}=(e^{-1})^2=0.3679^2=0.13535$.よって 0.135.

〔2〕独立なので分散は足し算です.$${\operatorname{V}}[X]={\operatorname{V}}[U]+{\operatorname{V}}[V]=2+2\times\frac12\times\frac12=2+0.5=\textbf{2.50}.$$

よくある誤り
  • 母関数の2階微分 $G''(1)$ を ${\operatorname{E}}[X^2]$ と思い込む.$G''(1)$ は階乗モーメント ${\operatorname{E}}[X(X-1)]$ で,分散は $G''(1)+G'(1)-\{G'(1)\}^2$.

  • 確率を取り出すのに $s=1$ を代入する(確率は $s=0$,モーメントは $s=1$).

検算・時短

母関数を直接微分しても確認できます.$P(X=1)=G'(0)$ で,$G'(s)=\frac14e^{2(s-1)}\{2(1+s)^2+2(1+s)\}$ より $G'(0)=\frac14e^{-2}(2+2)=e^{-2}$.分散は $\log G(s)=2(s-1)+2\log(1+s)-2\log2$ を使うと,$(\log G)'(1)=2+1=3={\operatorname{E}}[X]$,$(\log G)''(1)=-\frac{2}{(1+s)^2}\big|_{s=1}=-\frac12$ で,${\operatorname{V}}[X]=(\log G)''(1)+(\log G)'(1)=2.5$.

参照参考書 2.3.2項(確率母関数),2.3.5項(独立な確率変数の和)/WB p.9〜10

問2.9 積率母関数による分布の特定

確率変数 $X$ の積率母関数が $M_X(t)={\operatorname{E}}\bigl[e^{tX}\bigr]=(1-2t)^{-5}\ (t<1/2)$ である.

〔1〕 $X$ の分布として正しいものを一つ選べ.

  1. 形状母数5,尺度母数2のガンマ分布(自由度10のカイ二乗分布)

  2. 形状母数5,尺度母数 $1/2$ のガンマ分布

  3. 自由度5のカイ二乗分布

  4. 平均2の指数分布に従う独立な5個の確率変数の標本平均の分布

  5. 平均10,分散20の正規分布

〔2〕 $P(X\ge a)=0.05$ となる $a$ を求めよ.(小数第3位を四捨五入し,小数第2位まで答えよ)

解答欄アイ.ウエ

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正解:〔1〕① 〔2〕18.31

積率母関数が与えられている+分布の特定 $\to$ 一意性定理により,見覚えのある形に当てはめます.形状母数 $\alpha$,尺度母数 $\beta$ のガンマ分布の積率母関数は $(1-\beta t)^{-\alpha}$,自由度 $k$ のカイ二乗分布は $\mathrm{Ga}(k/2,\,\text{尺度}2)$ なので $(1-2t)^{-k/2}$ です.

〔1〕$(1-2t)^{-5}$ は $\alpha=5$,$\beta=2$ のガンマ分布.$k/2=5$ より自由度 $k=10$ のカイ二乗分布でもあります.正解は ①.

  • 尺度 $1/2$ なら $(1-t/2)^{-5}$ で,形が違います(尺度と率 $\lambda=1/\beta$ の取り違え).

  • 自由度5のカイ二乗分布は $(1-2t)^{-5/2}$.指数の「$k/2$」を忘れた誤りです.

  • 平均2の指数分布は $(1-2t)^{-1}$ なので,5個の和なら $(1-2t)^{-5}$ ですが,平均$\bar X=S/5$ は $M_S(t/5)=(1-\frac{2t}{5})^{-5}$ になります.

  • 平均 $\alpha\beta=10$,分散 $\alpha\beta^2=20$ は合っていますが,正規分布の積率母関数は $e^{10t+10t^2}$ で別物です.

〔2〕$X\sim\chi^2(10)$ なので $a$ は自由度10の上側5%点.[付表3] 自由度10,$\alpha=0.05$ の欄より $\chi^2_{0.05}(10)=18.307$.よって 18.31.

よくある誤り
  • 〔1〕で率と尺度を取り違える(②),自由度の半分を忘れる(③).

  • 〔2〕で下側5%点 $\chi^2_{0.95}(10)=3.940$ を読む.$P(X\ge a)=0.05$ は上側です.

検算・時短

平均 $k=10$,分散 $2k=20$ が $\alpha\beta=5\times2$,$\alpha\beta^2=20$ と一致します.上側5%点は平均10より十分右にあるはずです.

参照参考書 2.3.3項(積率母関数,例「指数分布とガンマ分布の積率母関数」),2.3.4項(母関数で分布が決まる)/WB p.9〜10, p.41, p.45

問2.10 キュムラントと独立な和

$X_1,\dots,X_9$ は互いに独立に平均1の指数分布 $\mathrm{Ex}(1)$ に従い,$S=X_1+\cdots+X_9$ とする.$\mathrm{Ex}(1)$ のキュムラント母関数は $K(t)=-\log(1-t)$ である.

〔1〕 $S$ の歪度 ${\operatorname{E}}[(S-\mu)^3]/\sigma^3$($\mu,\sigma$ は $S$ の平均と標準偏差)に最も近いものを一つ選べ.

  1. $0.22$

  2. $0.67$

  3. $0.94$

  4. $1.00$

  5. $2.00$

〔2〕 $S$ の尖度 $\beta_2={\operatorname{E}}[(S-\mu)^4]/\sigma^4$ を求めよ.(小数第3位を四捨五入し,小数第2位まで答えよ)

解答欄ア.イウ

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正解:〔1〕② 〔2〕3.67

独立な和の高次の特性値 $\to$ キュムラント母関数 $K(t)=\log M(t)$ は独立な和で足し算になるので,$\kappa_r(S)=9\,\kappa_r(X_1)$.あとは$$\text{歪度}=\frac{\kappa_3}{\kappa_2^{3/2}},\qquad \text{尖度}\ \beta_2=\frac{\mu_4}{\sigma^4}=3+\frac{\kappa_4}{\kappa_2^{2}}$$ を使います($\kappa_4=\mu_4-3\mu_2^2$ より).指数分布はすべての次数のモーメントが有限なので,歪度・尖度は定義できます.

$K(t)=-\log(1-t)=t+\frac{t^2}{2}+\frac{t^3}{3}+\frac{t^4}{4}+\cdots$.$\kappa_r=K^{(r)}(0)=r!\times\frac1r=(r-1)!$ なので$$\kappa_2=1,\quad\kappa_3=2,\quad\kappa_4=6 .$$ $S$ については $\kappa_2(S)=9$,$\kappa_3(S)=18$,$\kappa_4(S)=54$.

〔1〕歪度 $=\dfrac{18}{9^{3/2}}=\dfrac{18}{27}=0.667$.最も近いのは ② の $0.67$.

〔2〕$\beta_2=3+\dfrac{54}{9^2}=3+\dfrac{54}{81}=3.6666\cdots\ \to$ 3.67.

  • $0.22=2/9$:歪度も分散の逆数と同じく「$1/n$ 倍」になると考えた誤り.正しくは $2/\sqrt9$ で,$1/\sqrt n$ 倍です.

  • 正しい.$2/\sqrt9=0.667$.

  • $0.94=\sqrt{8/9}$:$S$ を自由度9のカイ二乗分布と取り違え,$\chi^2(k)$ の歪度 $\sqrt{8/k}$ を使った誤り.$S\sim\mathrm{Ga}(9,1)$ で,$\chi^2(k)=\mathrm{Ga}(k/2,\text{尺度}2)$ とは別物です.

  • $1.00$:分母を $\sigma^3$ ではなく $\sigma^2$ にした $18/18$.

  • $2.00$:$\mathrm{Ex}(1)$ 1個の歪度のまま.和をとると歪度は小さくなります.

よくある誤り

〔2〕で超過尖度 $\kappa_4/\kappa_2^2=0.67$ を答える誤り.問題文の $\beta_2={\operatorname{E}}[(S-\mu)^4]/\sigma^4$ は3を引かない定義です.

検算・時短

$S\sim\mathrm{Ga}(9,1)$ なので,ガンマ分布の歪度 $2/\sqrt\alpha$,尖度 $3+6/\alpha$ に $\alpha=9$ を入れても同じ答えです.歪度 $2/\sqrt n$,超過尖度 $6/n$ が $n$ とともに0に近づくのは,中心極限定理(第7章)で和が正規分布に近づくことの表れです.

参照参考書 2.3.7項(キュムラント母関数),3.1.4項(歪度と尖度)/WB p.9〜10, p.13〜14

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